速度標識が設けられていない一般道路の制限速度は60km/h、自動車運転教習所や運転教則本ではこのように習います。
しかし、道路によっては、多くの車が60km/hを超える速度で走っていて、その流れに乗ろうとすると70km/hあるいは80km/h程度で走らざるをえないといった状況に遭遇したことがある人は多いと思います。
しかも、そういった区間を毎日通っているのに、速度取り締まりに遭遇したことがないという経験ありませんか?
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「実勢速度」という考え方
警察による道路上での速度取り締まりは、一般的に「ネズミ捕り」と呼ばれ、ドライバーから恐れられています。
しかも、「何もこんなところで取り締まりなんかしなくても…」と不満に思いつつ違反キップを渋々切られてしまったという人もいるでしょう。しかし、ここ数年来、このような取り締まる対象道路についての不満に応えるべく、制限速度オーバー車が多い区間だからといって、ワナを仕掛けて手ぐすね引いて待ち構えているというような取り締まり形態からは脱却する方向性がみられます。
但し、制限速度を超えることは法令違反であることに違いはなく、それが交通安全上の危険を招く可能性が高い区間に関しては、従来通り取り締まり対象としつつ、当該道路の構造や沿線の通行者数、過去の交通事故事例などを勘案し、制限速度を超える車が多くても、特段の問題が起きにくいと判断できる区間を対象に「実勢速度」という概念を取り入れています。
実勢速度とは、ある道路区間を走行している自動車の速度を全て計測し、それらの85%の台数が実際に走行している上限の速度(85パーセンタイル速度と呼ばれます)を、その区間の一般的な速度、すなわち実勢速度とみなす考え方です。
速度取り締まりは意外と現実的対応にシフト
言い換えれば、ほとんどの車が制限速度以内で走っている区間で、一部の車だけが大幅な速度超過をすれば悪質と言えます。
多くの車が制限速度をある程度超える速度でも安全に走っている中で、その流れに乗って走っている一部の車だけを取り締まるのは現実的ではないとも言えますし、不公平感も募ります。実勢速度に基づく速度取り締まりは、そういった状況に対する現実的対応にシフトするものと言えるでしょう。
一方で、幅の狭い道路や通学路といった、比較的事故の起こりやすい道路においては、可搬式の小型オービスを活用するなど、従来以上に速度取り締まりを強化する方向であり、そのような公平かつ実効性のある取り締まりは、むしろ歓迎したいと思います。